月を狩る者狩られる者
眠りの中で、私は夢を見ていた。
十六夜と初めて会った、あの惨劇の日の夢。
でも、少しおかしい。
私はあの時ドアのところから床に倒れる両親と十六夜を見ていた。
なのに今は十六夜の姿は見えず、“私”は両親を“見下ろして”いる。
血溜まりの中に同じ色の雫が規則的に落ち、静けさの中ポチャリ……と小さな音が響いている。
その音が、しばらくして二つに増えた。
二つの雫。
赤い雫と赤じゃない雫。
ああ、そうか……。
今私は、十六夜の視点で見ているんだ。
それに気付くと同時に、私は忘れていたことを思い出す。
理解出来なかったから記憶から抹消していたこと。
そうだ。
そうだった。
あの時十六夜は、泣いていたんだ……。