月を狩る者狩られる者
「朔夜……」


私のためなんて……正直嬉しい。


こんなとき、愛されてるって思える。


朔夜の手が優しく顎に触れ、顔が近づく。


目を閉じ、唇が触れようとした瞬間――パンパンと手を叩く音がした。



「はい、そこのバカップル! 用は済んだんだからそういうことは他所でやってくれ! それとも何かい? それは彼女すらいない私へのあてつけかい!?」

佐久間さんがちょっと半泣き状態で叫ぶように言った。


私は呆気にとられる。


佐久間さん、それなりに年くってるしもう結婚してるのかと思ってた。

ダンディーな感じで顔も悪くないのに……。


これまでよっぽど出会いが無かったか、仕事一筋だったのね。

可哀相に……。

 
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