【完】あたしが君を守るから
「あーゆーむーっ!!」
子供みたいに、あたしの名前を呼ぶ彼。
髪もくしゃくしゃと乱れていて、ネクタイも緩んでいてスーツも着崩している。
「椎、形だけでも当主になったんだからちゃんとしないと」
誰に見られているかも分からないんだから。
壁にもたれかかっていた体を起こす。
「俺だって驚いてるんだよー? 父さんの弟が歩の親で、実は俺とはいとこ関係とかいうのに」
ぶつぶつと頭を掻き上げながら呟く。
椎が近づく度に、目線の高さはあがり
ついに見上げるほどに。
少し厚い唇の口角はあがっていて、黒い瞳にはあたしが映る。