トマトときゅうり


「ふーん。こう見えても俺ってば結構繊細なんだけどもね・・・。ぐいぐいとね。いってもいいならやるんだけどね」

「へ?」

「いや、こっちの話。はい、次は?」

 軽く右手で払われて、話を終了されてしまった。

 何だろう、最後の、どういう意味なんだろう。きゅうりが繊細って・・・それもまた信じられない。

 繊細・・・?ちらりときゅうりを見ると目が会った上にうん?と聞かれて戸惑った。

「あ・・・えーっと・・ですね・・・」

 質問のペースを微妙に崩されたけど、何とか続けていく。

 コーヒーがなくなっても、ずっと話していた。突っ込んだり笑ったりで忙しかった。ランチの時間はとっくに過ぎて、日が傾き夕日に変化するころ、ようやくお店を出たくらいだった。

 久しぶりにきゅうりと話せた。入る時は早く帰ることだけを目標にすえていたけど、なんて素敵な時間を過ごせたことか。

 私は上機嫌でコートをはためかせて歩いた。

 アンケートの指令も無事完了できた上に、きゅうりのことが少し知れたのも、テンションが上がってる原因だったかもしれない。

 キッカケをくれた水野さんに感謝しなくちゃ。

 カサカサと乾いた音を立てる落ち葉を踏みしめて、歩くきゅうりの後ろをついていく。

 風の温度もさがっていて、コートの裾から冷たい空気が入り込む。

「どうぞ。ついでだし、送っていくから」


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