トマトときゅうり


「うにゃあ!?」

「猫か、お前は。冷たい手だなー」

「くっ・・・楠本さん!?あの・・・手が・・」

 きゅうりは真っ直ぐ前を向いたままで、片手で私の手を掴み、片手で運転している。

「手が?」

「・・・えーと・・」

 あなたの手が。私の右手を握ってますが。

「寒いのかなと思って」

 きゅうりが言った。

「はい?」

「両手みてすり合わせたりしてるみたいだったから、寒いのかと思って。やっぱり冷たいな。ヒーター上げるか?」

 するっと握っていた手を放して、ヒーターの調節キーを触る。

「・・・」

 ・・・びびび・・・ビックリした、心臓に悪いったら、もう・・・。

 いきなり掴まれて、それだけで今では私の体温は確実に上がってしまった。心配してくれてたのか。それにしても・・・ビックリした。

 なんせ男性に免疫のない私。男の人の手って、あんなにごつごつしてて大きいんだなあ・・・て思ってドキドキした。

 あったかかったし。

 ・・・心配してくれたんだ。
 
 耳の中でうるさく音を立てる鼓動がきゅうりに聞こえてしまわないかとヒヤヒヤした。
 

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