トマトときゅうり
何気ない気遣いが心に染みる。どんどん侵食していって、それは淡い花色に変わる。
好きにならないようにだなんて、こんなのじゃ無理だ。
隣をそおっと盗み見る。
線のハッキリした横顔。首筋や顎のラインに色気を感じて急いで目をそらした。
彼は高嶺の花。私なんかじゃ到底届かないような、天空に近いところに華麗に咲く花。そう思って、傷つかないように、諦めようとしていた。
この一年以上、色んなことに疲れてしまった私の心。誰かを好きになって、その人に預けるにはまだ危ない均衡の私の心。
ぐらぐらしている。不安定で、少しの風にも散りそうになる。
傷つきたくない。
でも、
この人が、やっぱり好きなんだ――――――
好きな子はいる。
きゅうりの声を思い出す。
きゅうりの大事な人って、どんな人なんだろう。・・・きっと、長谷寺のお嬢さんも敵わないくらいに綺麗な人なんだろうな。その人のために、女性の契約は取らないんだとしたら、それも原因の一部だとしたら、それがちょっと羨ましい。
誰かにそんな風に愛される日が、私にも来るんだろうか。それを考えると不安まで感じて瞳が潤みだしてしまう。