トマトときゅうり
キス。
12月に入った。
営業さんたちの仕事ペースは一気に加速して、自動的に事務の仕事も増えていく。毎日がどんどん過ぎていって、合間に数々の締め切りだとか、細かい忘年会だとかが入れられていく。
体を壊してる暇が、文字通りない忙しさだ。
「あー・・・・疲れた・・・。こんなペースじゃこっちも壊れるってば」
3人の営業さんが固まりになって保全業務や新契約の書類を次々出してきたところで、隣の仲間さんの口から珍しく苦情が出た。
「もー今日は持ってこないで!一体何件目の住所変更させるつもりよ!この忙しい12月に何でこんなに引っ越す家が多いのよ!?」
おお。切れてる。
素晴らしいお顔にしわを寄せて、ボールペンを放り出していた。
美人が怒ると迫力が凄い。メラメラと背中からオーラまで見えるようだった。
お互いに慰めあうことも出来ないしね、と各自の机に積み上げられた書類の山をうんざりして見渡す。誰も、他の人の仕事を手伝う余裕がないのだ・・最近。
寒くなって屋上でのお弁当タイムも止めていたから、しばらくは食堂で事務のみなさんと一緒にお昼を食べている。
残業も多くなっていて、家に帰ってお風呂に入ったらご飯もそこそこにバタンキュー状態な私は、ほんと、会社の人たちとしか会話をしていない。その濃い人間関係にも、ちょっと疲れてきていた。
まだ私はアルバイトだからと早く帰らせてもらってるけど。正社員の仲間さんたちは、残業したくないからと朝を早くきて、仕事を片付けたりしているようだった。
「・・・無理。クリスマスには、過労で倒れてる、あたし」
コーヒー入れるわ、と立ち上がって、ぶつぶついいながら仲間さんは出て行った。