トマトときゅうり
受け取った書類に目を通して確認しながら、きゅうりが何か続けて言いかけた。
「あら、楠本君。お疲れ様~」
その時、コーヒーを片手に仲間さんが戻ってきた。
「おう、お疲れ様。休憩?」
きゅうりが向き直って仲間さんに笑いかける。・・・さっき、何て言いかけたんだろう・・・。
気になったけど、机の電話がなって、急いで取る。カウンターの後ろで二人が世間話をしている中で、私は仕事に戻った。
電話を終えるともう既にきゅうりの姿はなく、結局なんだったんだろうと首をかしげるハメになった。
「さあ、気合入れなおしたわ!やるわよーっ」
仲間さんが号令をかけて、事務のブースは再び修羅場になっていった。
金曜日の終礼で、今年のうちの事務所の忘年会の会場が発表された。
来週の木曜日に、会社近くの居酒屋を借り切ってするらしい。営業と事務の正社員は全員参加が義務付けられているが、アルバイトである私や定年退職後の復帰組も呼ばれているので、私も参加予定は入れていた。
なんつったって、タダだし。晩ご飯代が一食浮くのは有難い。
仲間さんたち女性組みは、皆食べるだけ食べて早々に帰ると言っていた。毎年無礼講の忘年会は、普段すましている爽やかイケメンエリート達が、大いに壊れて見るに耐えないんだそうな。
「やっぱり、男は所詮男よ。シモネタも炸裂で、酔いが回ったらいただけないから、瀬川さんも初め顔だして、食べるだけ食べたら逃げた方がいいわよ」
って、なんてゆーかなアドバイスも頂いた。