トマトときゅうり


 ぎゃあ。私はまた首をすくめた。これが自分への叱責なら、私の精神はとっくに崩壊しているに違いない。

 だけれども、まだしっかりして聞こえる青山さんの声が言った。

「・・・・今日中には・・・」

「今日か!?言ったな!?絶対持って帰ってこいよ!手ぶらだったら帰社するな!」

 ここで霧島部長、じろりときゅうりの顔を睨んだ。

「お前もなにしてんだよ!ちゃんとサポートしてやれよ!今日青山がとってこれなかったらお前の責任でもあるんだぞ!」

 ハラハラしてお腹痛くなってきた・・・と思っていると、落ち着いたきゅうりの声が飛び込んできた。

「大丈夫です。今日アポがとれているところで、必ず」

 ・・・・必ずだって。

 本当に大丈夫かな・・・。

 凛と立って発言するその格好良さに惚れ惚れするよりも、駄目だった時のことを考えて暗くなる事務員の私。

 朝礼が終わるときゅうりは青山さんの席の横について打ち合わせをしていた。今日はずっと一緒につくと決めたのだろう。

 きゅうりの仕事は、なんと終わっている。今月のノルマは今月入ってすぐに達成した上に、おまけに3件入れていた。

 手続きしたの私だから、びっくりして覚えてる。

 何でもない顔で手渡されたからつい驚いて「凄いですね」と言うと、端整な口元をにやりとゆがめてこうのたもうた。

「ご褒美に何くれる?トマトちゃん丸ごと、貰えるのかな?」

 また瞬殺だった。彼は私を真っ赤にさせ、散々遊んで行ったのだ。

 うーーーー、思い出したらムカついてきた・・・。


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