トマトときゅうり
よーし、今年最後に、ちょっと『女力』なるものをあげてみよう!
定時に仕事終え、挨拶をしてエレベーターホールに出る。
今日は一度もきゅうりに会ってなかったけど、仕事帰りの計画に心が躍っていて、思ってたより落胆してない自分がいた。
こんな調子で・・・うん、こんな調子で、きゅうりのことから離れられたらいいよね。心の中でそう思う。
出来るだけ、心の中を占めないでほしい。あの男には。
ビルの外に出て、その寒さに首をすくめる。
うううう~っ・・・寒い・・・。そういえば、昨日初雪降ったもんね。そりゃあ寒いよね。
ストールを鞄から引っ張り出し、コートの上から肩にまく。
よーし、出発だ!
電車で乗り換えなしの、この辺りでは一番大きな街へ行く。
駅の中も外もクリスマスの飾りつけで風景全体がキラキラしていた。それをみて、更にテンションが上がり、足取りも弾む。どこもかしこも結構な人出で、夜の繁華街のざわめきも興奮剤になっていた。
まず、どこに行こうかなあ~。あそこ、新しいファッションビル出来たんだったっけ?晩ご飯をどこで食べるかも考えないと――――
その時、何気なく目に入ったウィンドーの中のディスプレイに、視線が吸い寄せられた。
「・・・・うわあ・・・・可愛い・・・」
ロシアンブルーの色のサテン生地に白いリボンがデコルテラインと裾に入った、フレンチスリーブのミニドレス。白いリボンには、細かく繊細な模様が縫い取りされていて、丈が短い割には上品なイメージを出している。