トマトときゅうり


 エレベーターが着き、事務所の鍵をあけて入る。私は事務ブースへ、青山さんは営業ブースへと入っていった。

 ・・・えーと。鍵、鍵。

 電気をつけずにドアをあけて廊下の明かりを取り入れて探す。幸い、手を突っ込んだら鍵を入れたポーチにすぐ手が当たった。

 よかった。今日、締め出されたらこの気温では完全に凍死コースだったわ。

「・・・危ない危ない」

 独り言を呟いて、ポーチは鞄にしっかりとしまう。他には何も触ってないけど、事務ブースを出るときドアの所で一応振り返って確認した。

 「鍵、あった?」

 いきなり声がして、かなりビックリした。

「ひゃあ!!」

 ビクンと飛び上がって、その拍子に事務所の鍵を落としてしまった。チャリンと涼しい音を出して、鍵は二人の間に転がる。

「あ、ごめん。驚かした」

 青山さんが鍵を拾おうと屈む。同時に私も屈んでいたので、おでこがぶつかった。

 衝撃で後ろに尻餅をつく。

「・・・いったあ~い・・」

「・・・確かに。重ね重ね、ごめん・・」

 お互いに間近でおでこを摩りながら苦笑する。

「あはは・・おでこまで赤くなっちゃった。早いですねー、書類しまうの」


< 117 / 231 >

この作品をシェア

pagetop