トマトときゅうり
青山さんは、口の端をあげてちょっと笑った。
「オレ、諦めたわけじゃないから」
「・・・」
あまりにストレートなお言葉。慣れてない私はそれだけで意識を失うかと思った。いや、本当に。
「多分、まだまだ瀬川さんのこと、好きになると思う。やっぱり付き合って欲しいと、また言うと思う」
カッと顔に血が集まってきたのを感じた。
「・・・はい」
「でも、迷惑にはなりたくないんだ。明日からまた、難しいと思うけど・・・普段通りに出来るように頑張るから、避けることはしないでくれるかな」
「そんな、こと・・・しません。本当に、青山さんの意にそえなくて、ごめんなさい」
「仕方ないよ、こればっかりは」
肩をすくめてみせて、床においてあった鞄を持った。
「・・・ちょっと急ぎすぎたんだよね、オレ。失敗失敗」
エレベーターのボタンを押して振り返る。
「寒いよね、ごめんね。オレ、忘年会顔出さなきゃ」
あ、そうだ。青山さんはまだ出てないんだった。
そこまで気付いて、寒気が襲ってきた。・・・ヤバイ、かなり冷えたかも・・。