トマトときゅうり


 仲間さんはその手をつかって、このブランド化粧品のクリスマスセットを貰ったらしい。

「えーっと・・有難いんですが、私使ったことありません」

 ぽりぽりと頬をかきながら言う。

 そんな乙女なもの、使ったことない。大体、高い化粧品はおいそれとは買えないし・・・。いつもピンクベージュのグロスだし・・。たまにリップクリームですら付け忘れることもある。

 そういえば初対面のきゅうりに荒れ荒れでガサガサの唇を突っ込まれたんだった。

 仲間さんは、ええー!?と叫んで、私の手にそれを押し付けてきた。

「だったら初挑戦よ!睫毛は大事よ、睫毛は!!2次会でいい男に出会うかもしれないじゃない?」

「あのー・・友達のお祝いにいくんですけど」

「それは判ってるわよ!でも自分の将来のためにいい男をゲットするのは本当に大事なことなんだから!目の保養と心の保養よ、瀬川さん!」

 おお~・・・仲間さんが熱く語っていらっしゃる・・・。

 まあ、そうかもしれないけど・・・でも、目の保養なら、この事務所にはそれなりにイケメンがたくさんいるわけだし・・・。

 私はつらつらと男性営業の職員の顔を順番に思い浮かべていく。

 あんなことがあったけど、青山さんだって、スポーツ系の爽やかな男の人だ。一般的には「格好いい」と評される外見だと思うし・・・。

 茶色のくるくるとした目に日焼けした肌。長めの髪なんかも、モテるんじゃないかなあ~。

 ・・・やっぱり、勿体無いことしたかも。


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