トマトときゅうり
「案外、器用じゃないんですね。恋も仕事もではないんですか?」
きゅうりは肩をすくめて、呆れた顔を作る。
「営業って仕事は休みもあるようでないからな。どっちも中途半端になって、成績は上がらねーわ、彼女には泣かれるわ、じゃ良いことは何もないだろ」
「・・・はあ、そうですね。やっぱり彼女は休日にはそばに居て欲しいものでしょうしね」
そう呟いて頷くと、きゅうりはカウンターから身を乗り出してにやりと笑った。
「男だって、居てやりたいんだよ。好きな子の喜ぶ顔は見たいもんだろ」
「でも、休めない?」
「この仕事で結果出したけりゃあな。だから俺は、仕事で自信がつくまでは彼女は作らないって決めてた」
ふーん。・・・でも何か、作ろうと思えば楽勝って感じの言い方に反感を覚えた。何でこんなに偉そうなの、この人。
だからちょっと突っ込んでみることにしたのだ。意地悪そうな顔を作ってつんと顎を突き出す。
「で、このままずーっと一人で過ごして、寂しい老後を過ごすわけですね」
するとまたにやりと不敵に笑ったきゅうりが言った。
「仕事に自信がつくまではって言っただろ。今ならもう、仕事も恋も大事に出来ると思うぜ。俺は、作らない。トマトは、作れない、だろ?」
カッチーン!