トマトときゅうり


 まだ暗いうちに目が覚めた。

 何だか、やたらと静か・・・。何で何の音もしないんだろう。

 ケータイを開いて時計を確認すると、いつもの起きる時間より30分ほど早かった。

 ・・・何で?この静かなのは。

 起き上がってエアコンのスイッチを入れ、窓に近づく。

「・・・おお~」

 雪が降っていた。

 それで音がしなかったんだ!

 まだ真っ暗な中、街灯に照らされたところだけを、白くキラキラ輝いて雪が舞っていた。

 「・・・ホワイトクリスマスになったんだ・・・」

 雪をみるのは久しぶりだった。

 実家がある大阪では殆ど雪は降らないし、こちらに来てからも毎年ってほどではない。

 学生の時は雪山のリゾートでバイトをしていたこともあって、毎年のようにスキーやスノボをしていたが、就活が始まってからはいつでもスーツで歩き回っていた。

 窓辺に頬杖をついて、じっくりと眺める。

 このキラキラしたものを、私はいつか誰かと見れるかな。大事な人と、神聖な夜に、手をつないで見ることが出来るかな。

 きゅうりの姿が瞼に浮かぶ。


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