トマトときゅうり
「・・・今度は何固まってんだ?」
きゅうりの声がして、ハッと現実に戻る。
「あの・・・寒いんで、取り敢えず玄関どうぞ」
ドアを開け放して、さっさと靴を脱いだ。もういいや、上がるか上がらないかはヤツに任せよう。
私の部屋は8畳のワンルームで廊下なんて立派なものはないので、玄関に入れてしまったら部屋の中が全部、それはもう隅々までが見えるんだけど、それは諦めた。
掃除したばかりでよかった~。下着とか、干してなかったよね?男性にみせたくないようなものや、とても生活感に溢れているようなものはなくてホッとする。
コートも脱がず、買ってきたものを冷蔵庫に入れる。
きゅうりは玄関に入り、ドアを少し開けたままで私のすることを見ていた。
バタバタと小さい部屋で動き回って片付けて、玄関に突っ立っているきゅうりに向き直る。
「出れるか?」
きゅうりが聞いた。
・・・・なんか、どこに行くの、とか、なんで私が、とか、聞きたいことはたくさんあるけどはぐらかされそうな感じ・・・・。
うー・・・またこの寒い中へ出てくわけ?
なぜ、私が。
振り返って机の上に置いたDVDを見る。
・・・ああ、私のぬくぬくの幸せな今宵の計画よ、サヨウナラ。