トマトときゅうり
もう。本当に連れてこられただけって感じ。今日がクリスマスだとか、好きな人が横にいるとかって場面でないほどの、ムードのなさ。
こうなったら、何だかわからないけど自分の役目をさっさと果たして、帰って至福のぬくぬく計画をやり直そうっと。
先のほうへ歩きかけたきゅうりが振り返って待っていたので、早足で追いつく。
さっむ~!寒い寒い寒い!さっきより気温、下がってるんじゃないの?ぶつぶつと口の中で言いながら付いて行くと、きゅうりの歩く速度が下がった。
「いたいた」
きゅうりが低い声で言って、前方をみた。つられて私も顔をあげ、そのまま引きつった。
・・・・青山さんがいるじゃーん!!!
ぎゃあー、どうしよう、私今日女子会ってことになってんだけど!?確かに確かに時間とか言ってないから、これからってことにすれば大丈夫!?ってか何でここに青山さんもいるのよ~!
バタバタと一人でパニックを起こす。うわあ~、待って待って!私帰ってもいいですかああああ~!?
口に出せないままできゅうりを見上げるけど、やつは真っ直ぐ前を向いて歩いて行ってしまう。
営業鞄を持って、青山さんは長谷寺様のお嬢さんと話していた。イルミネーションに照らされて昼間のように明るかったから、お嬢さんがとってもお洒落をしてきているのが細部までよく判った。
二人の姿を確認したきゅうりが、私のほうは見もしないで早口で言った。
「頼みってのは、今からとにかく、瀬川は黙って一緒にいてくれって事なんだ」