トマトときゅうり
時計を睨みながら仕事をしていたけど、4時前になっても青山さんもきゅうりも帰社しない。
ああ~・・・やっぱりあの提案では無理だったのかなあ~・・・。
こっちがそわそわしてしまう。
締め切り前の事務所は閑散としている。皆ギリギリの5時まではどうにも帰社出来ないのだ。帰ってきてしまうと、まだ時間があるだろう!と怒鳴られるから。
霧島部長は窓際に立って外を眺めている。時計のほうをちらとも見ないのは、それだけ気にしてるって証拠だ。
「何とかラッシュも終わったわね。お疲れ様」
仲間さんが大きくのびをして笑顔を向けてくる。
私はそれに引きつった笑顔しか返せない。
「・・・青山さん、まだ帰ってきませんね」
つい、手に持ったボールペンをくるくると回す。昔から焦っている時の私の癖だ。
少し微笑んで、仲間さんが言った。
「気にしてるの?・・こればかりは仕方ないわね。やっぱり、好調なときと不調な時が、営業にはあるから」
「そうですね」
「でもそれを乗り越えて、常に好調状態にするのが、一人前といえるわけだし。今日は後10分でしめだもんね」
「はい」
ため息が出る。やっぱり2,3時間でどうにかなるわけではないのかなあ・・。