トマトときゅうり
『判りました、じゃあそれでやっとくわ。――――それと、瀬川さん?』
「はい?」
仲間さんの声の調子が変わったから、何事かと緊張する。
『楠本君と何があったの?』
直球の質問に、動揺して携帯を落としてしまう。
ひょええええ~!何で!?仲間さんって、魔女かなんか!??
慌てて拾い上げて耳に押し当てると、仲間さんの大きなため息が聞こえてきた。
『・・・図星だったようだけど、別に誰かに聞いたわけでもないのよ。今朝から楠本君がやたらと事務ブースにくるなと思ってたの。大して用事もなさそうだし、ハッキリ言って邪魔だったから、何か用?って聞いたわけ。そしたら―――――』
・・・凄く想像できて、こんなときなのに少し笑えた。仲間さん、きっとまた綺麗故のすさまじい形相で睨んだんだろうなあ・・・。
睨みつける仲間さんに、不機嫌そうなきゅうり。あははは。
『―――そしたら、トマトは?って聞くから、うちの会社にトマトなんて名前の人は居ないわよ!!って噛み付いたの。いつもならブーブー言うくせに、今日は大人しく瀬川は?って訂正して聞くから、これは昨日何かあったなって思ったの。・・・もしかして、風邪の原因は、楠本君?』
・・・えーっと。
「・・・風邪は・・・私が勝手に引いたんです」
『ってことは、やっぱり何かあったのね?風邪は違っても、元気がないのはアイツのせいなわけね。全くあのバカ男!!・・・判ったわ、瀬川さん、後は任せて』