トマトときゅうり


 何かを決意したかのような強い言葉を残して、仲間さんはブツンと電話を切った。

「あ?」

 ・・・・・電話、切れた・・・。

 思わず手の中の携帯電話を凝視してブンブン振ってみた。

 え??え!??仲間さん、後は任せてって、一体何をどのように任せるのですかあああ~!!?

 呆然として携帯を閉じる。

・・・・えーっと・・・何か、よく判らないけど、めちゃ怖いことになってるような気がする・・・。

 しばらく空中を睨んで、もう一度会社に電話をするか、いさぎよくきゅうりに掛けるか、または風邪の治療を続行するかで悩む。

 ・・・バカ男って・・・。うちの会社の上位を疾走するスーパー営業(しかも美形)を捕まえて、バカ呼ばわりする人は仲間さんだけだろう。多分、きっと。

 うーん・・・どうしたら良いのかしら・・・。

 でも。

 ・・・ま。いっか。

 で、風邪の治療を優先することにした。

 もうどうせ今年はきゅうりの顔も見ないかもしれない。弱虫だと言われたっていいの、私はきゅうりから逃げ回ることに決めたのだ。仲間さんに何されるかは知らないが、聞かなかったことにしてほっとこうーっと。

 瞼を冷やしていたスプーンを流しに置いて、紅茶を淹れる。さあて、私はこれから現実逃避、DVD鑑賞のお時間ですわ~。


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