トマトときゅうり


 よかった、元にもどりつつあるんだ、私。

 お風呂から上がって体を拭いていると、携帯が着信で机の上で震えているのが目に入った。

 相手を確認して、仲間さんの番号だったから、ホッとした。

 体にタオルを巻いたままで通話ボタンを押す。

「はい、瀬川です」

『瀬川さん?仲間です。体調はどお?』

 明るい仲間さんの声が聞こえてきた。何か後ろが騒がしい。外から掛けてるのかな、と思って、そりゃそうか、もう仕事終わってるもんねと頷く。

「お疲れ様です。熱、下がりました。ありがとうございます」

『ごめんね、何回も電話して。熱が下がったの、よかったわ~!今何してるの?』

「?・・・ええと・・・起きて、お風呂に入ってました」

『お風呂に入れるくらい元気になったのね。益々いいわ』

 仲間さんの言葉がひっかかる。益々いい?・・・って、何が?というか、私としては昼間の電話の続きが聞きたいのですけど。

「あのー、仲間さん。楠本さんに何もしてないですよね?」

 うん?と仲間さんは電話の向こうで一瞬黙る。怖い。その沈黙が怖いです~!

『大丈夫大丈夫、楠本君は生きてるから~』

 ケラケラと笑うけど、私は正直にどん引きした。い、生きてるって!?何、その言い方・・・。

 ところで、と強引に仲間さんは話題を変えた。


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