トマトときゅうり


「いや、だから、味見だって」

「すすすすすスプーンを使ってください、スプーンを!」

「何でだよ、いいじゃねーか指の1本や2本。減るもんじゃねーし」

 ニヤニヤしながら反論してくる。

 からかわれてる!!今日はいい人だって思ってたのに!それなのに!!さっきまでの紳士は一体どこに消えたのよおおお~っ!!!

 私は全身をあっちっちにして叫んだ。

「減ります!もう、セクハラですよ!!!」

「セクハラ?これが?・・・・お前、嫌だったか?」

 パッと表情がかわって、心配そうな顔になったからこちらの勢いも冷めていった。

 ゆっくりと瞬きを繰り返す。目の前には目を細めるきゅうり。


・・・・嫌?


 ビックリしたけど・・・・別に、嫌ではなかった・・・。

 舐められてるのに、気持ち悪くもなかった・・・。

 いや、なんかでは・・・・。

 あらら・・・私ったら――――――――

 口元を手で押さえた。



< 32 / 231 >

この作品をシェア

pagetop