トマトときゅうり

誤解と混乱。


「瀬川さーん、はい、お土産」

 青山さんがカウンターにもたれてニコニコ笑いながら立っていた。

「おお!!これは、うわさの『天使のロールケーキ』では!?」

 興奮して声が上がる。

 最近とても有名になって手に入れるのに2時間は待つというロールケーキを、青山さんが営業のお土産に買ってきてくれたとこ。

「わあ、凄いわね、並んだの?」

 仲間さんや、他の事務メンバーもやってくる。

 青山さんはみんなの反応をみて申し訳なさそうに笑った。

「実を言うと、これはお客さんに貰ったんです。ひとつどうぞって。今日のお客さんは販売の方で、これは昨日の破棄ものなんですけど・・・」

「破棄っていってもまだ賞味期限もあるし、やったじゃなーい!・・・あ、でもこれは瀬川さんにお土産?」

 仲間さんがニヤニヤしながら上目遣いで青山さんを見る。

「いえいえ、会社にです!皆さんで食べて下さい!」

 青山さんは急いで訂正して、これ以上はごめんとばかりに自席に戻っていった。

「うふふ~♪ごめんね、瀬川さん、からかっちゃって」

 ほかの事務員さんもくすくす笑ってる。

 とたんに居心地が悪くなって、私は小さくため息をついた。

「・・・・・仲間さん・・・。何回も言いますが、そんなんじゃありません・・・」


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