トマトときゅうり

「・・・なあ、俺と付き合えよ」

 きゅうりのハスキーな声が聞こえる。私はそれをただ聞いていた。

 まさか。


 ・・・そんな。


「・・・・・本気で言ってます?」


 暴走する鼓動とは逆に、頭はすごく澄み渡ってる。口から出たのは、はいやいいえではなく、質問だった。

 見詰め合ったまま――――――――――――――

 顔が

 どんどん近づいて・・・・彼の綺麗な唇が―――――――


「・・・なーんてな」


 私を閉じ込めていた両手がするっと退けられた。

「冗談。言ってみただけ」

 すっと後ろに下がって、きゅうりは笑った。

 笑ったのだ。

 そして、呆然とする私を手でどけて、ドアを開け、行ってしまった。


 あとには、沸騰して音を立てるやかんと、水蒸気でいっぱいになった狭い部屋に、私が一人―――――――――――――。




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