トマトときゅうり


 9時から5時まで勤務で土日祝日休みの待遇を利用して、生活費を少しでも増やすべく、たまに町でのビラ配りのバイトをいれていたけど、今日はそれもナシ。

 ああー・・・いい天気だなあ・・・。

 もう、あのヤローのせいで、私の休日も台無しだよ・・・。

 何度も頭の中でリフレインされるあの場面。

 もしあそこで「はい」と返事をしていたなら、どうなっていたんだろう。

 きゅうりはそのまま付き合うってことにしたのかな。それともはいって言った後でも「冗談」って言ったんだろうか。

 あのまま顔が近づいてきたら、キスも・・・しちゃったのかな。

 冗談だって笑ったけど、あれは本当に冗談だったのかな・・・。

 何度も何度も繰り返す質問。

 何度も何度も繰り返す「起きなかった」未来。

 出会わなかった唇は、それでも私の唇に感触を残したかのように赤味をつける。

 ちっとも眠れなかったので、鏡の中の私はほんと酷い顔だった。

 ・・・・ううう・・・花の乙女であるはずの23歳が・・・。こんな状態の肌と顔色。酷過ぎるでしょ、さすがにこれは。

「しゃーなあーい・・・洗濯物でも・・・しよ」

 顔を洗って、長い髪を頭の上でひとつにまとめる。

 家事をするときにはこのおだんごヘアーに限る。

 経済的事情で自炊はマメにしている。朝ごはんもちゃちゃっと作って、テレビも見ずにぱくついた。


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