トマトときゅうり


・・・うん、どれだけ悩んでても、からかわれて笑われたことに傷ついてても、ご飯は食べれるんだな、私。

「これが若さってもんか・・・」

 一人暮らしで増えた独り言をいいながら、部屋を片付け、片っ端から掃除機をかけていく。

 洗濯物をピンクのランドリーバスケットに放り込んでいく。ごみはごみ袋にまとめて明日出すっと。

 シンクを重曹で磨く。力をいれてごしごしと擦る。

 きゅうりのことを頭から追い出そうとして、いつもより集中して掃除した。

 まだ認めたくない。

 私、もしかして気にしてるだなんて。

 あの男のことを。

 いや、そんな。

 私が面白くて、反応をみたくてからかってるだけだ。

 好きになんか、絶対なっちゃいけない相手。

 文字通り、住む世界が違うし、だいたいあの男に彼女がいないはずがない。

 彼女の話なんて聞いたことないぞ、という別のつぶやきは無視することにして。

 からかわれただけよ、からかわれただけ・・。


 気がつくと、年末の大掃除後なみに部屋が綺麗になっていた。

「あらまあ・・・」

 ため息をつく。私ったら、こんなに、気にしてんだな・・・。


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