トマトときゅうり


 私は一人、空の中にいた。

 青い空。端から端までそのどこまでも広がっていく世界を見回す。


 眼下に広がる白い雲海。私はふんわり浮かんでそれを見下ろしている。

 そして次の瞬間、いきなり世界が夕焼けに支配された。

 眩しい光が真っ直ぐに目を指してくる。

 下を見下ろせば、ピンク、オレンジから赤、そして紫へと雲が染められていく。

 何て美しいグラデーションだろう・・・。七色に光り輝く世界の真ん中で、私は微笑んでいた。

 風が吹いて髪を揺らす。

 ああ・・素敵だ。

 ここは希望に満ちた世界。私は空を飛んで、全ての変化を見守ってればいいんだ。


 遠くでキラリと光るものが見えた。

 暮れていく世界では色が溢れているのに、あの光だけは飲み込まれずにハッキリ判る。

 行かなくちゃ。声に出さずに呟く。


 行かなくちゃ、私。頭の中で私の声が響く。あそこへ、行かなくちゃいけない気がする。


 でも。


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