トマトときゅうり
からかいでなく、私をちゃんと見て欲しかった。いたずらする前のやんちゃな目でなく、優しい目で見て欲しかった。そして何より、自分の気持ちに気付いてから、恥ずかしくて見れないのだ、きゅうりのことが。
「うーん。あれは愛情表現なんだと思うけど・・・。瀬川さんは、楠本君が好きなんだと思ってたわ」
「なっ・・・仲間っさん・・・」
「あら、ごめんさないね、また図星だったのね」
「いやっ・・・ちがっ・・・」
バタバタと両手を振り回す。
「あらあら、真っ赤ね。まあ、楽しい。あなたで遊びたくなる楠本君の気持ちが判るわあ~」
「・・・!!」
顔を両手で覆った。ああ~!穴があったら入りたい~!!一人で悶える怪しい私の隣で、仲間さんはいつものたらんとした素敵な声で呟いた。
「でも楠本君も可哀想に。知らぬは本人ばかりって感じね」
「・・・・は?」
「ほら、小学生だと思えばいいのよ、楠本君のことは」
「・・・へ?あのー・・・ちっとも判りません」
仲間さんは色っぽく微笑んで、それ以上は何も言ってくれなかった。
何なんでしょうか~?どないやねん、と思わず方言で心の中で突っ込む。
小学生の男の子?精神年齢が?・・・いや、でも、きゅうりは私よりは遥かに大人だと思うけど・・・。彼が小学生なら私は幼稚園児・・・。凹むわ。
胸にくすぶりを抱いたまま食堂を出て事務所に戻る。