トマトときゅうり


 青山さんは、さっそくビックマックに齧り付きながら聞く。

 私はビックマック頼む人を初めてみたので、多少興奮していた。・・・あんな大きいの、食べる人いるんだ・・・。まあ、居るからあるんだよね、そりゃそうなんだけど・・・。

「・・・いえ、特に好きとかではないんですけど・・・財布の中身と相談した結果が、これです。すみません、簡単なご飯に付き合わせちゃって」

 恐縮していると、あははと笑われてしまった。

「俺が誘ったんだから、ご飯代、気にしなくても出したのに。まあ、俺も懐あったかいわけじゃないから、正直助かったんだけど」

 二人で笑う。こういう気遣いは、嬉しいな。この人は優しい人だ。


 いただきます、と手をあわせて、私もチーズバーガーを食べ始める。

 さっさと別々に並んだので、お金を払わせなくて済んだ。

 ご飯の代金を出されるのは、好きではない。自分の食べた分くらい払いたいし、青山さんは、そりゃあ私よりはお給料もいいとは言え、同じくまだ新卒の扱いなのだから、奢られるなんてとんでもないと思っていた。

 前のお礼は別として。

「おお、美味しい。実は、マクドナルドも久しぶりなんです」

 疲れた体には判りやすいくらい濃い味付けのものが美味しく感じる。わかる~と二人で盛り上がる。

 最近の事務所のこと、営業部の噂、霧島部長の失敗話、話は盛り上がる一方で、全然尽きることがなかった。

 こんなに笑ったのは久しぶりだ。

 思い返しても、ここ最近の私はかなり暗かった。


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