トマトときゅうり


 青山さんの言葉が次々私の頭を駆け抜けていく。ふらふらしないように、立つのが精一杯だった。

 全身に大波を受けたかのようなショックを覚えていた。

 ・・・・教えたんだ、ケータイ番号・・・。

「ねえ、瀬川さん?」

 はっとする。そうだ、今はまだ青山さんが目の前にいるんだ。ショックは部屋に戻ってからゆっくりと片付けて――――――――――

「お似合いだと思うんだよね、俺的には。どう思った?」

 にこにこと悪意ない笑顔で青山さんが私を見ている。

 頭の中には今日会ったばかりの長谷寺様のお嬢さんの映像。

 人形のように可愛らしい彼女と、整った顔立ちの長身のきゅうり。

「瀬川さん?」

「・・・大変、お似合いですね・・・」

 そうだよね、やっぱそう思うよなー・・・能天気な青山さんの声がすり抜けていく。

 どうやって挨拶して別れたかは覚えてないけど、次に意識がハッキリした時には、いつもの電車の中で一人揺られていた。

 電車だ、と思った。

 無意識に手の平を胸元に持っていく。



 ・・・・・くそう・・・胸が、痛い・・・・。





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