トマトときゅうり


 どんどん列に並ぶ営業さんに「おめでとうございます」と花をつけていっていて、壇上をみる暇が私にはなかったけど。

 でも、誇らしい気持ちで胸はいっぱいだった。


 最後の人に花をつけ終わると、手伝い専用の休憩室へ行くように言われた。

 あとは、パーティーが終わったら、各事務所の責任者に会って終了後の指示を受けるだけ。

 休憩室ではいつも電話で話すけど、会うのは初めてって事務員ばかりで、ひとしきり挨拶に花が咲いていた。

 
 へえ、この人、もっと怖い印象と思ってたけど、会ってみれば可愛らしい人じゃん!などの発見があって面白い。

 ま、お互い様だけど・・・。

 他の人が私にどんな印象を持ったかは知らないんだけど・・・。

 そして、自分達の事務所の営業自慢が始まる。うちのナニナニさんはどーだとか、いや、うちのソレソレさんだってこーだとか。

 私は一生懸命自慢しあう事務のアルバイトメンバーを微笑ましくみつめていた。

 いいよね、こういうの。皆可愛い。

 「そうよ、ところで見た?!北事務所の楠本さん!支社の広報誌でしかみたことなかったけど、ホンモノはめちゃいい男~!!!」

 いきなりきゅうりの話が出てビックリした。

「うーん・・確かぁにね。格好良かった。でもあたしは中央の・・稲葉さん?だっけ?彼の方が断然好み。垂れ目がすきなのよ、ぐっとくる」

「稲葉さんかあ、あたしもあの甘え顔好きだなあ。楠本さんは、なんていうか・・・歌舞伎顔だもんね。和風の、イケメンていうか」

「南の高田さんもいいよ~!あの長髪が素敵。滅多に笑わないらしいけど!」


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