トマトときゅうり
ただしそれは、赤面症をからかわれるまで。
以来、きゅうりにだけは恋心を抱くまい、と固く決心しているってわけ。
「おお、お助けマンだな、仲間。退散するよ」
きゅうりはニヤリと笑った。そして資料を手にさっさと引き上げる。私は渾身の呪いを込めて、その背中を睨み付ける。
くっそ~~~!
仕返しをしてやりたい。
ううー、腹がたつったらないってーの!
握りこぶしを作ってわなわな震えていたら、仲間さんの声が聞こえた。
「まあ、落ち着いて。楠本君は、瀬川さんのことが可愛くて仕方ないのよ」
笑いながらさらりと言う。
「落ち着いてられません!!こっこっこれは、自分でも嫌で仕方ない、赤面症のせいなんですから!!ついでに可愛がられているのではなくて、からかわれているんです!!」
ああ、怒りすぎて酸素が足りない・・・・。
細長い手を伸ばし、よしよしと頭をなでてくれてから、仲間さんは首をかしげた。
「治そうとしなくていいんじゃないの?素直に気持ちが表現できるってことでしょう?本当に、可愛いとおもうけどなあ~」
「・・・・なったことがないから判らないんです・・・。どんな状況であれいきなり真っ赤になるんですよ。頬を染める、とかのレベルじゃないの、見てて判るじゃないですかあああ~」
がっくりと肩を落とす私に、仲間さんはにこにこと微笑んで、容赦なく現実に引き戻した。