トマトときゅうり
秘めた決意。
風をよけて暖かい車の中にいると、現実感が薄れてくる。それに、何だかこの車とっても静か・・・あんまり揺れないし。やっぱりかなりいい車なのかな。
シートベルトに頭をもたれかけさせて、景色をずっと眺めている。
お互いに黙っているけど、別に嫌な感じじゃない。隣にいるのがきゅうりで、彼が運転している車に乗っているとは思えないくらいに、リラックスしてしまった。
・・・お腹、すいてるんだけど・・・忘れてたかも。
色んなことがここ30分で起こったから、きっと私の頭はショートしてるんだな、とぼんやり納得する。
初めての大会。沢山の背広の男性と可愛い事務員達、本物の中央の稲葉と、きゅうりとの会話、それに、追いかけてきた長谷寺様―――――――・・・
あの子と一緒にいるきゅうりを見ると、やっぱり少し胸がざわめく。でも気にしないって決めたんだったのに。
いっそのこと二人がうまくいって付き合ったりしてくれてたら、私はこの恋心をちゃんと失くせたかもしれないな。
あの綺麗なお嬢さんと、男っぽくて格好いいきゅうり。
並んだら身長差は目に付くかもだけど、やっぱりお似合いだった。
私は脇役として自分の人生を進んでいく。きゅうりとは関係ないところで。
・・・・・そう、なる筈だったのに。
『客だ。それ以上でも、それ以下でもない』さっきの言葉が頭の中で繰り返される。
きゅうりは、何とも思ってなかったんだな、彼女のこと。
あーあ、って思いながらも顔が緩むなんて、やばいぜ私。
「・・・・だって・・・・好きなんだもん・・・」