トマトときゅうり


 頷いたきゅうりを見ていて、水野さんに託された指令を思い出した。

「あー!そうだ、アンケート」

「ん?」

「楠本さんにアンケートに答えて頂きたいんです。食べてからでいいので、お願いできますか?」

 急に笑顔になって振り向いた私に、ちょっとビックリしたみたいだ。

「・・・おお、いいけど。久しぶりにトマトの笑った顔みたなー」

「え」

 きゅうりが肘をテーブルについて顔をのせ、私をマジマジと見た。

「いつも下向いてるか怒ってるか真っ赤で逃げるかどれかだよな。最近、事務所でも笑ってるの見たことないし」

 ・・・いや、それは、アナタが原因なわけで・・・。

「俺そんな嫌われたかなって思ってた。いつも俺と話す時、不機嫌そうだし。視線も合わせないようにしてただろ」

 ・・・も、勿論、バレバレでした、よね・・・。ははは。

「え・・・えーっと、そんなつもりでは・・なかったんですが・・・」

「手が当たっただけでも引かれたし」

 うっ・・・。

「仕事頼みにいくと電話か外出かメモ書きかだし」

 ううっ・・・・。

「連れまわしたのは悪かったけど、さっきまでも体ごと他所向いてたし」

 うううっ・・・・。


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