トマトときゅうり
「あの・・・すみません・・えっと・・」
しどろもどろになってゴネゴネ口の中で言い訳していると、きゅうりはカウンターテーブルに両手で顔を隠して突っ伏してしまった。
「・・・俺、傷ついた」
ぎょっとして思わず私は隣をガン見する。
うわあああ~!何てことだ!一体なぜこんなことに!?どどどど、どうしたらいいのーっ!?
「くっ楠本さん、あの、本当にすみません、でも決して嫌だからとかでは・・・」
真っ赤になって更に弁解していると、くくく・・・と笑い声がして、腕と腕の間から、いたずらが成功した子供のような、輝いてる瞳が覗いていた。
「――――――!!」
「あっはっはっは、やっぱり面白いなトマトは!」
他の人の視線も気にせずに、あけすけな大爆笑をしている男の隣に座って、私は文字通り化石化していた。
・・・・信じられない。
ちょっとちょっと・・・・・まさかの、演技だよ・・・・何この人。
隣でゲラゲラと大爆笑している絶世の美男子に殺意を覚えて拳を握り締める。テーブルの上のフォークが目にとまって、これで刺してやろうかと一瞬真剣に考えた。
その時、涙目になって喜ぶきゅうりの命を私から救ったのは、料理を運んできてくれた接客係の女性。
怒りに震える私の前に、出来たての、ホカホカの、素晴らしく美味しそうなカルボナーラを置いて慰めてくれたのだ。