トマトときゅうり


 なんせ、元々お腹が空いている。

 しかも、私は怒っていて、理性は欠片しかなかった。

 だから、きゅうりの存在なんか気にせずに、盛大に食べることが出来た。

「頂きます!」

 そう宣言して、あとはひたすら無言で食べてやった。ガツガツと。隣できゅうりが驚いて見ていたのには気付いていたけど、完全に無視した。

 その後きゅうりが追加で頼んだピザも横取りして食べてやった。空腹で倒れたらいいんだ!とついでに呪いもかける。バカ男!思い知れ~!!って。

「よく食べたなー。トマト、小食だと思ってた・・・」

 ってきゅうりが唖然として言うくらいには、ガツガツ食べた。上品のじの字も見えなかったに違いない。

 ふん、と鼻を鳴らす。

「私で遊んだ罰です!・・・まあ、いつもよりは、かなり食べましたけど・・」

 実際、結構スーツのスカートがキツイ・・・。後悔先立たずとはこのことね、と大いに自分で突っ込んだ。

「まあ、美味しそうに食べてたから、見てて気持ちよかったけど」

 グラスの水のお代わりを頼んで、きゅうりが笑った。

 ・・・あ、私、普通に話せてる。って、その時に気付いた。

 つまり、前みたいに。

 自分の気持ちを気にしていて、それをどうしても完全に受け入れれなくて、もがき苦しんでいた自分が見えた。

 今は満腹で、あったかくて幸せで、何の気負いもなくきゅうりの顔をみて、楽しく話すことが出来ている・・・。




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