あやまち
「何泣いてんだよ」


「だって……」



翔太とは、もうこんな風に過ごせないと思っていたから。


それに、翔太に対して、こんなに暖かい気持ちになれるとも思っていなかった。



「涙は、自分で拭けよ。俺はもう悠亜には触れらんねぇから」


「えっ」



翔太の口から飛び出した言葉に、首を傾げる。


涙を自分で拭くのはわかる。もうカレカノじゃないんだから。


でも『もう触れられない』って、どういう意味?


目の前で、黙々と食べ始めた翔太を見ながら、もしかしたら翔太はもうあたしとはヨリを戻す気はないのかもしれないなと、漠然とそう思った。


といっても、あたしだって、今の位置が心地いいと思っているだけで、ヨリを戻したいと願っているわけではない。
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