あやまち
その瞬間――



「やべっ」



そう言って、パッと離れた渉。


その表情は、頬がほんのり赤く染まっているのに、どこか切なそうに眉を下げていて。



「渉?」



顔を覗き込むと、視線をふぃとそらされた。


ついさっき、想いが通じ合って、今それを確かめるようにキスを交わしていたのに……


この態度は何?


避けられたって思ってしまうのは、あたしだけ?



「……」



もしかして……


想いが通じ合ったけど、さんざん振り回したあたしのことを許してくれていないとか?


それとも、やっぱりあたしとは無理だと思ったとか?



そんなことを考えていると



「……っ……」



目の奥が熱くなって、あっという間に涙がこぼれてきた。

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