あやまち
「じゃあ何でキスの途中で離れたり、顔をぷぃってそらしたりしたの?」


「……」


「渉?」


「……それを言ったら、俺の方が嫌われそうだ」


「えっ、何で?」



目の前の渉は、さっきのようにまた眉を下げた。



「あたし、どんな渉でも好きだよ?嫌いになんかならないよ?だから、言って?」



あたしの言葉に考えるような仕草を見せたあと、渉は小さく息を吐いてから口を開いた。



「あのままキスを続けていたら……抱いてしまいそうだったから」


「えっ」


「悠亜を抱きたくなったって言ったんだよ」


「……っ!」



あの態度で嫌われたと思い込んでいたから、予想外の言葉に頬がカッと熱くなる。


恥ずかしくて、そのままうつむいた。



「なのにさ、顔を覗き込んできたり、俺があっち向いたって駄々をこねたりして、……悠亜が俺を煽るから」

< 205 / 220 >

この作品をシェア

pagetop