あやまち
「笑うなよ」


「だって」



可笑しいものは可笑しい。


それでも、ゆっくりと渉の方へと足を進めて



「大丈夫?」



顔を覗き込んだ。


そしたら、



「うわっ!」



人を幽霊でも見るかように、渉は体を後退させながら驚いた。



「ちょっとそれ、大袈裟すぎない?かなり失礼なんだけど」



頬を膨らませてぷぃっとそっぽ向いた。



「あ、わり……つーか、寝起きから悠亜と二人きりっつーのが、慣れねーんだって」



まあ、あたしも慣れていないけど。


今だって、あたしの心臓は、周りに聞こえそうなくらいにどきどきと、大きな音をたてている。



「そういや……」


「ん?」



突然何かを思い出したように立ち上がった渉。



「昨日舞い上がりすぎて、大切なことを忘れてた」
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