あやまち
そのまま立ち上がって、顔を洗いに行った大きな背中を見ながら、




「あり得ない」




そう呟いた。




なのに……


すぐに顔を洗い終え戻ってきたと思ったら、口角を上げながらそれを突っ込んでくる。




「間接キスくらいで動揺してんなよ?」


「してないもん!」




頬を膨らませながら、否定していたら……



からかいながら細めていた瞳が、鋭いものに変わる。



真っ直ぐ射抜くように見つめてくる瞳から、視線をそらせない。




「間接じゃなくて……、本物のキス、してみる?」




トクンッ――



あり得ないはずの言葉に、あり得ない反応を見せるあたしの、心臓。




「俺とも、酔った勢いで、ヤろうぜ」



「……!」




“俺とも”……




「ヤ、ヤらないっ!」




そう声を張り上げたら、一気に意識が遠退いていった――…


< 3 / 220 >

この作品をシェア

pagetop