あやまち
この部屋に入ってくるのは、合鍵を渡している翔太にしか、あり得ないんだ。



でも渉は……、あり得てしまう、そんな言葉を口から吐き出した。




「一つだけあるだろ」




そう言って、向けられた視線の先には……




「……!」


「簡単に、入れたぞ」




そうだった……



一つだけ、あり得る場所が……あったんだ。



サークルで知り合った渉だけれど、偶然にも、部屋が隣だった。




「これ、やる」




いまだ固まっていたあたしを前に、渉がそう言って手渡してきたものは……



さっき渉から見せられた、香水。




「証拠隠滅だ」




そう言って、あたしの視線の先にあるベランダの窓から、颯爽と、出ていってしまった。






この瞬間から……



渉との親友関係は……



修復不可能なものへと、崩壊してしまった。
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