《短編》空を泳ぐ魚
Ⅲ
「ただいま。」
家に帰りあたしは、気だるい体を引きずるようにして自分の部屋へと向かう。
「セナちゃん、おかえりなさい。」
あたしの声に気付いたのか母親が、顔を覗かせた。
だけどあたしの手に持っていた弁当の袋を見て、一瞬悲しそうに視線を落とす。
バイトを始めてすぐ、“晩ご飯はいらない”と言ってからは、
あたしの毎日はいつもこんな感じ。
食事時間が遅くなるからあたしなんか待って温め直さなきゃいけないのも悪いし、
それを言った父親も、“そうか”と言うだけだったから。
「ママー!
みーこの塗り絵、どこに仕舞ったのー?」
「あぁ、今行くからー。」
年の離れた妹の声に、母親は声を上げてパタパタと足音を響かせた。
小学校の頃に病弱だったお母さんが死んでから、
父親が再婚したのは自分よりも10も離れた今の母親だった。
あたしが中学生になってから生まれた妹は、
最近口が達者になって生意気なので、やっぱり苦手。
どこかあたしに気を使ってる風な母親も、家庭にあんまり興味を示さない父親も。
干渉しないでくれたらそれだけで良いのに、と。
いつも思っては、ため息を混じらせてしまう。
そんなつまらなだけの毎日に、今日みたいな面白そうなことが落ちてただけ。
だからあたしは、拾うようにあの教師とのたまさかでエッチをしてみただけのこと。
大嫌いなテストの答えを教えてくれればラッキーだし、
“付き合う?”とか言われたのは意外だったけど、まぁ、言ってるだけだろうし。
別にあたしは、エンコーしたわけじゃないから悪いことしてないし、
“教師とヤるな”なんて六法全書にだって書いてない。
狂ったわけでもなければ、過ちを犯したとも思ってない。
だから襲って来たのは、極度の疲労感だけだった。
家に帰りあたしは、気だるい体を引きずるようにして自分の部屋へと向かう。
「セナちゃん、おかえりなさい。」
あたしの声に気付いたのか母親が、顔を覗かせた。
だけどあたしの手に持っていた弁当の袋を見て、一瞬悲しそうに視線を落とす。
バイトを始めてすぐ、“晩ご飯はいらない”と言ってからは、
あたしの毎日はいつもこんな感じ。
食事時間が遅くなるからあたしなんか待って温め直さなきゃいけないのも悪いし、
それを言った父親も、“そうか”と言うだけだったから。
「ママー!
みーこの塗り絵、どこに仕舞ったのー?」
「あぁ、今行くからー。」
年の離れた妹の声に、母親は声を上げてパタパタと足音を響かせた。
小学校の頃に病弱だったお母さんが死んでから、
父親が再婚したのは自分よりも10も離れた今の母親だった。
あたしが中学生になってから生まれた妹は、
最近口が達者になって生意気なので、やっぱり苦手。
どこかあたしに気を使ってる風な母親も、家庭にあんまり興味を示さない父親も。
干渉しないでくれたらそれだけで良いのに、と。
いつも思っては、ため息を混じらせてしまう。
そんなつまらなだけの毎日に、今日みたいな面白そうなことが落ちてただけ。
だからあたしは、拾うようにあの教師とのたまさかでエッチをしてみただけのこと。
大嫌いなテストの答えを教えてくれればラッキーだし、
“付き合う?”とか言われたのは意外だったけど、まぁ、言ってるだけだろうし。
別にあたしは、エンコーしたわけじゃないから悪いことしてないし、
“教師とヤるな”なんて六法全書にだって書いてない。
狂ったわけでもなければ、過ちを犯したとも思ってない。
だから襲って来たのは、極度の疲労感だけだった。