《短編》空を泳ぐ魚
「清水さん。
ちょっと、話あるんだけど。」


あたしを呼び止める声に顔を向けると、

二人組の女が腕を組んでこちらを睨んでいた。



「…どちら様?」


見たことないような顔なのでクラスメイトではないのだろうが、

偉そうな態度から同じ3年だと推測した。


が、あたしに話すことなんて思い当たらない。



「…志田努の彼女、って言えばわかると思うけど?」



ごめん、全然わかんない。


てゆーか、その男の自体わかんないし。


声を上げた女の声に驚いたように、

今度は廊下に居た生徒達があたし達を遠巻きに見つめる。


本日二度目ともなれば、さすがにうんざりだ。



「…何かよくわかんないんだけど、その彼女さんがあたしに何の用?
てゆーか、何で怒ってるのか知らないけど、誰かと間違ってない?」


「ふざけんじゃないわよ!!」


やり過ごそうと言葉を掛けた瞬間、隣の女が怒声を浴びせてきて。


思わずポカンとしてしまう。



「…あのさ。
何でも良いけど、そんなに怒って暑くないの?」


「アンタのそーゆー態度がムカつくんだよ!!」



えーっと。


あたしの質問、聞いてました?




「オイ、何やってんだ?!」


瞬間、騒ぎを聞き付けたのだろう岡部とナントカ先生が、こちらに駆け寄ってきた。


何だか知らない間に、ヤバいことになりそうな予感ばかりがして。


帰りたい、と。


呟いたらきっと、もっと怒らせてしまいそうだからやめといた。


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