《短編》空を泳ぐ魚
「…大体の理由はわかったけど、清水は“知らない”と言ってるじゃないか。
それにお前達、進学希望なんだから問題は起こすなよ。」


ベラベラと喋り続ける女共の話を聞き終わった学年主任は、

疲れた顔で二人をなだめた。



「…でも清水さんがエンコーしてるのって、問題じゃないんですか?」


「…援助交際…?」


瞬間に、学年主任の顔が怪訝に変わった。



「…あたし、してないし。
てゆーか、証拠ないのに適当なこと言わないでよ。」


「でも、オッサンと歩いてるの見たって人知ってるんだからね!」



いやそれ、店長だし。



「…一緒に歩いてるだけで、何で“エンコーしてる”になるのよ。
どーゆー脳みそでそんな考えになるの?」


「でも、火のないところに煙は立たないんだからね!」


「もぉわかったから、やめないか!」


さすがの他の先生たちも、睨みあうあたし達に声を上げた。


本当に、蒸し焼きにでもなりそうなほどに暑い。



「…清水。
それが本当だとしたら、かなり問題だぞ?」


「織田先生。
頭ごなしに決めつけて清水を怒るのも良くないと思いますよ?
それに、清水はそんなことするような生徒には見受けられません。」


意外なことに、あたしの後ろから岡部が声を上げた。



「…いや、しかし…」


「とりあえず、僕が一番年も近いし、ちょっと二人で話をさせてもらえますか?
きっと清水も、副担任の僕になら何でも話してくれると思いますから。」


何が“僕”だ、と思うあたしをよそに、

岡部はもっともらしい言葉を並べて教師達を説得した。


そして、背中を押されるようにあたしは、隣にある生徒指導室に連れて行かれる。


まぁ、さっきよりはマシなんだろうけど。


助けられたことにより、借りが出来てしまったのが許せない。


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