《短編》空を泳ぐ魚
「てゆーか、さっきの質問だけど。
誠とは付き合うなんて考えられないし、仲間みたいなもんなんだよ。」


「…仲間?」


「そう。
あたしライブハウスでバイトしてて、みーんな友達で。
誠もそのひとり。」



てか、バイトしてたんだ。


だからうちに来るのもいつも遅くて、あんな適当な格好なのか。


ふ~んと納得し、短くなった煙草を消した。


まぁ、パーカーにジーンズ、

スニーカーでエンコーなんてやってるはずもないと思ったけど。


白石とは何でもないと知って、何気に喜んじゃってる俺。



「今日は?」


「…初めて休んじゃった、バイト。」


「何で?」



俺に会うため?


そう続けたかったが、いつもみたいに怒られそうなので言葉を飲み込んだ。



「…何か、ライブハウスまで辿り着く前に疲れ果てちゃって。
そしたら急に、アンタに呼ばれてたこと思い出してさぁ。」


「―――ッ!」


思ってもみなかった答えに、思わず口元が緩んでしまって。



「…顔、キモい。」


「…うわー…。
相変わらず冷たいこと言うねぇ。」



上げて落とすのは、作戦ですか?


俺、こんなんばっかだったら確実に泣くぞ?



「…嬉しいねぇ。
そこまで俺のこと考えてたんだったら、もぉ付き合えば良いじゃん。」


「…何でそーなるの?」



そーならないんだ。


残念だな、俺。



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