《短編》空を泳ぐ魚
「…嫌じゃねぇから言ってんだろ?
何で俺の気持ち、伝わらねぇかなぁ。」


「…ウザいくらいに伝わってくるけどさぁ。
追いかけられたら逃げたくなるんだよね。」



ウザいんだ、俺。


てか、追いかけるのやめちゃったらお前、絶対そのまま逃げるだろ。



「…アンタ、空に魚泳いでるの見たりしないの?」



うん、魚は肺呼吸じゃないし、羽も生えてないからね。


煙草の煙をくゆらせながら、清水は相変わらずの不思議そうな顔。



「…変なの。
雲が魚の形したりするの、見たことないんだ。」



雲のことですか。


だからお前、空ばっか見て探してたんだな。



「…俺、今思ったけどさぁ。」


「何?」


「お前、わかってる前提で話すからややこしいんだよ。」


「…わかってなかったの?」


ポカンとした清水は、

“アンタって教師のくせに馬鹿なんだ”と、納得したのか煙草を消した。


てか、よくもまぁそんな台詞ばかり言いやがる。



「ねぇ、和樹。
あたし何か、アンタのこと好きかもしれない。」


「え?!ハァ?!」


キョトンとして言う清水に俺は、何かよくわかんなくて。


てか今、俺の名前呼んだろ?


つか、知ってたの?


それ以前に、“好き”って何?


どこでそうなった?!


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