《短編》空を泳ぐ魚
「…まぁ、あたしはどっちでも良いんだけどさ。
意外な“副担任様”の顔も見れたことだし。」


相変わらずの他人事で、煙草を吹かす俺を横目に清水は、さっさと下着を履く。



「…じゃあ、俺と付き合う?」


「あははっ!
アンタ、タダで口止めしようって作戦?」


“悪いけど、あたしには通用しないよ”


そう付け加え、清水はケラケラと笑う。



「…マジだっつったら?」


「それこそ笑える。
アンタ、教師に向いてないんじゃない?」



いや多分、さっきの今で俺はマジになったんだけど。


だけど、そんな言葉は続けられなくて。


俺が教師に向いてなことくらい、俺自身が一番わかりきってる。



「月曜、抜き打ちで持ち物検査あるぞ。」


瞬間、清水は驚く顔をこちらに向けた。


だけど少し考え、やっぱりいつもの顔に戻ってしまった。



「…あっそ。
じゃあ、あたし月曜遅刻するから。」


「お前、3年だろ。
内申とか、心配にならねぇの?」


「―――ッ!」



本当に俺は、“最低教師”の烙印を押されても仕方がないのだろう。


だけど、マジでこの女を繋ぎ止めたくなったんだ。



「ココに通うなら、少なくとも俺の英語だけは心配しなくても良くなるけど?」


「―――ッ!」


再び目を見開いたまま驚く清水の腕を引き寄せ、その唇にキスを落とした。


こんな細い体で世間の荒波と闘っていると思うと、堪らなく愛しく思ってしまう。



「…アンタ、マジで教師失格じゃん?」


今度俺の唇に触れたのは、清水の方で。


それを俺は、勝手に“OK”のサインだと受け取った。


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