彼の事情、彼女の…。
prologue
「ねぇ、俺と付き合わない?」
冗談っぽく軽く…でも、俺的には、今まで生きてきた17年の中で最初の『マジ告白』をした。
彼女…水瀬 爽果(ミナセ サヤカ)は、その、猫の様な目を一瞬軽く見開きクスリと笑った。
それだけで俺は、彼女を抱きしめたい衝動に駆られたのだが…グッと堪える。
「何?何の冗談?尋、一年に彼女居なかったっけ?」
サヤカは、形のいい薄い唇の両端を少し上げてそう言う。
「いつの話だよ。一週間も前に別れたけど?」
「はやっ。一か月続いてないじゃん。」
「ん~…。何か、『イメージと違う。』っつって…フラれた?」
「あぁ。あんた付き合いだすと冷たいもんね。分かる気がする。」
内容はともかく、俺達の間には穏やかな空気が流れている。
…ってか、俺のマジ告白流させねぇよ?
「…で?どうよ?今なら俺、お買い得だけど…付き合わない?サヤカなら特別に優しくするけど?」
俺の“優しく”に込められた意味…気付かねぇかなぁ…なんて、超・他力本願な俺…ヘタレだ…。
「ん~…、そうねぇ…。」
そしてサヤカは、とんでもない“条件”を出してきた。