彼の事情、彼女の…。
「…まぁ、冗談は置いといて、アカネには気を付けた方がいい。」
俺は、さっきまでの軽い雰囲気をぶち壊すように、マジな顔で言った。
「ん?どうゆう事?」
「アイツ、ターゲットはモノにしないと気が済まないタイプなんだ。俺の時もそうだった。最大限、彼方に対する事は俺がブロックするつもりだし、彼方には『佑ちゃんを守れ』って言っておいたけど…正直、どんな手で来るかも分からない。」
俺の時は、当時の彼女に対するかなり陰湿なイジメ…だったな…。
「・・・。」
「身の周りで、ほんの些細な事でも、おかしな事があったら、絶対に俺に言えよ。」
俺のマジな雰囲気に、睨んでいたサヤカもマジな表情を作り深く頷いた。
「…分かった。佑奈はアタシがしっかり見てるから。」
サヤカが…有る意味使命感を持って頷いた…けど。
ああ、違う。
違うんだ。
「違うよ、サヤカ。さっき言っただろ?佑ちゃんは彼方が居るから守ってくれる。彼方だってバカじゃないし、佑ちゃんに関しては彼方以上のヤツなんて居ないから、むしろ安心してるんだ。」
「はぁ?さっきと言ってる事違うじゃん!何?」
「だから、俺が心配してるのは、サヤカだよ!!!」
「・・・は?」
“意味が分からない”って顔も可愛いな…なんて思ってしまう俺こそが…空気読めないヤツなのかも…。